発酵食の挑戦、
小さな気づきが
地球の未来を変える

人と地球の健康
コーディネーターとして、
人と地球の健康をつなぐライフスタイルを
インタビューしました。
これからの時代に必要な
「プラネタリーヘルスマインド」。
身近な暮らしの中で気づきを促し、
実践している人のまなざしをご紹介します。

※プラネタリーヘルスライフ:
人と地球の健康につながるアクションを
暮らしの中に取り入れ広げていくライフスタイル

おじいちゃんおばあちゃんと一緒につくった味噌づくりを継承したい思いに駆られ、「醸せ師(かもせし)」になる。発酵教室を展開し、日本の食文化をつなぐ架け橋として山梨県から世界へ発酵文化を伝えることに情熱を傾けている。人と地球の健康をつなぐ“場所”をつくりたい──

昔ながらの知恵に新しさを吹き込む人と地球の健康コーディネーターの“場所”つくりに寄り添いました。

大豆に触れる手しごと、香りの原風景をたどって

私が「発酵」に魅せられたきっかけは、息子を妊娠したときに助産院で発酵離乳食教室に参加したときのこと。甘酒を使った離乳食づくりや麹の面白さに感銘を受け、もっと識りたいと思いました。

そして、幼い頃、祖父母が毎年欠かさず親戚分の味噌づくりをしていた原体験が、今の活動の原点になっています。祖父母と庭の大きな釜でゆでた大豆のことをよく覚えており、この手しごとを私が新しい形にして残したい、日本の食文化を次世代に伝えていきたいと思ったのです。以来、祖父母の想いや足跡をたどるように「醸せ師」として“美しい生き方”を広める活動を続けました。

かねてより、環境へのアクションとして自分にできることは何だろうかと思いながら、その一歩をなかなか踏み出せずにいました。「発酵」をきっかけに人と人がつながり、お互いに学びながら健康的な食生活を続ける “教室”に可能性を感じ始めていました。

祖父母が教えてくれた食文化の原風景が私の中に着実に根付いていて、何か次の行動を起こしたいという気持ちが温まっていました。

発酵の魅力を再発見—プラネタリーヘルスの視点から

プラネタリーヘルスライフ検定との出会いは、女神の森ライフスタイル研究所が主催したイベントに参加したのがきっかけです。アンバサダーの先生方のセミナーやワークショップを通じて、人と地球の健康を“同時に考える”ことができる点に強く惹かれました。私の醸せ師としての活動が地球にもよい影響を及ぼせることを理解すると同時に、自分自身の中で「環境へのアクション」を大きく捉え過ぎていたという気づきがありました。そして、伝統的な発酵食と環境課題をどう結びつけ、どう向き合っていくべきか自問自答する日々でしたが、検定との出会いにより、小さなひとつのアクションでも必ず地球に貢献できると感じられたのです。醸せ師として人も地球もシステムの一部である「全体性」を伝えていきたいと思い、受講を決意しました。

これまでは、発酵や発酵に必要な菌について追求してきましたが、食以外にも心や体、植物など相互関係で「プラネタリーヘルスライフ」が成り立っていることを識り、とても有意義な時間でした。学びの時間は気持ちが高揚し、動画視聴が止まらなくなったくらい楽しい時間でした。

2章「心を調える」では、味噌づくりは「マインドフルネス瞑想」にもつながるのではとハッとしました。お寺で教室を開催することがあるのですが、小さな子どもでさえも無我夢中に。大豆を潰す工程では必ず皆さん「無」になっています。まさしく自身の心の内側と向き合うひとときです。

現代人は情報過多で、常に思考が動いている状態ですね。教室でのマインドフルネスな時間で心が調う。そして発酵食で腸が調い、「腸脳相関」によって脳もクリアになるという、一連の流れが既にあったのです。心のあり方の重要性と腸脳相関のつながりを改めて学んだことで「発酵」の可能性と確かな手応えを感じました。

昔ながらの手しごとにはすべてに意味があり、全体性として影響し合っています。4章の「食を育む」では、改めて多様な食文化である和食の素晴らしさを再確認できました。検定の体系的な学びで得た「醸せ師」としての自信を感じ取ることができています。

発酵教室では、必ず地元の農家さんに協力してもらい地産地消を実践していますが、なぜ地産地消がいいのか具体的に理解できました。発酵教室に参加くださった皆さんと一緒に地域活性へ向けたアクションをできることが喜びにつながっています。次回の教室では、プラネタリーヘルスの概念を入れる内容で企画しているところです。人と地球の健康コーディネーター資格を取得したことで海外の方を対象とした教室開催への一歩を踏み出すことができました。

気づきから行動へ。環境課題に向き合う力を育てる“母”の想い

受講後は、「プラネタリーヘルス」は私だけのアクションではなく、子どもたちも生活の中で一緒に実践する「プラネタリーヘルスライフ」に変化しました。最近コンポストを始めたのですが、人参のヘタから芽がでてきたことに子どもたちは大興奮し、食べた物が循環することを目の当たりにしました。土に還るものと還らないものを理解できるようになり、散歩中に自らゴミ拾いをするようになりました。コンポストという小さな生活のアクションがきっかけとなり、人の健康だけでなく地球のことを自分ごとに考えられる大きな変化がありました。幼い子どもでも実践できる地球のためのアクションは身近にあることを私も学ばせてもらいました。

大きなことをするのは大変ですが、小さな習慣を続けていくことでいいのではないでしょうか。プラネタリーヘルスライフ検定では、完璧を目指さず、今の自分にできる範囲で続けることの大切さを学びました。そして、家族を巻き込んで無理なく習慣化できそうなたくさんのヒントを得ました。これができると「プラネタリーヘルス」が当たり前のライフスタイルとして定着するのでおすすめです。

我が家では、家族で一緒に発酵食品をつくることが健康づくりの一環になっています。仕事と家事や育児の両立は大変ですが、家族を巻き込んで習慣化する環境をつくれば小さな子どもも率先して行動してくれます。

「長女とのプラネタリーヘルスライフのひととき」
散歩中のふきのとう摘み、糠床をかき混ぜるお手伝い(写真=本人提供)

8歳の息子は醤(ひしお)担当、4歳の娘は糠床を担当しています。責任を持って手入れすることで食べる意欲が増しますし、食べ物を大切にする精神も育まれています。我が家では1歳から手伝わせていますが、それぞれ「ヒッシー」「ぬかちゃん」と名付けて愛情を注いでいます。

お母さんは頑張らなくてもいい。一緒に行動することで楽しい時間が増えるなら結果としてお母さんが楽になるのではないかと思っています。「発酵食」の実践が子育てと仕事を両立するための手助けになれば嬉しいです。

調和とは「季節の流れ」に感謝すること

調和とは、自然の営みを四季の移ろいから体感すること。同時に、私たちも地球の一部であることを識り、ともに循環していくことだと思います。季節の流れを自然から感じて触れる、その小さなアクションの積み重ねではないでしょうか。

発酵食品をつくることも調和のひとつです。自然のめぐみである微生物にたくさん触れることは食への感謝の表れであり、生活の中でできる大切なアクションです。

裏山に行くと季節のめぐみがたくさんあるので子どもたちと一緒に摘み、ありがたくいただいています。季節の移ろいを感じながら自然への感謝を抱き、子どもとともに成長していきたいです。

今、スーパーに並んでいるものは季節感を失っています。だからこそ四季の流れを自然から感じることがとても重要です。自然には「プラネタリーヘルス」のヒントが溢れています。季節の手しごとを生徒さんと共有し感謝する。そして、日本の発酵文化の素晴らしさを世界へ届けたいです。